【3】波紋のはじまり。(ルリ編)

第2話から数ヶ月後の話

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第3話:ルリ × 再会の再起動


春の風って、なんだか不思議。
あったかくなってきてうれしいのに、少しだけさみしくなる。

わたし、春になると思い出す。
高校の体育館で、リコが突然「ルリはベースな!」って言ってきた日のこと。

なんで?って聞いたら、「なんとなく!」って笑われて。
全然理由になってなかったけど、
そのときわたしは、「ああ、この子とならバンドやってもいいかも」って思った。


わたし、高校のときにリコとバンドを組んでた。
演奏はぜんぜん上手くなかったけど、毎日がすごく楽しかった。

でも卒業してからは、音楽から自然と離れてた。
家は5人きょうだいで、わたしは真ん中。
年の離れた弟たちの送り迎えやごはんの支度。
やらなくても怒られないのに、気づけばいつも“やる側”にいた。

バンドやってたことなんて、誰にも話さなかった。
別に隠してたわけじゃないけど、
「意外〜」って言われるのが、ちょっとめんどくさかったから。


そんなとき、
久しぶりにリコからメッセージが届いた。

「ルリ、久々に会いたいなって思って。
時間ある日ある?」

スマホの画面を見つめたまま、少しだけ動けなかった。
返事を打つ前に、なぜかスクショしちゃって、
自分でも“なにやってんの”って笑った。


春の午後、リコとカフェで再会した。

ちょっと髪がはねてて、笑うときに前髪を押さえるクセも変わってなくて。
でも、その笑顔は高校のときより、少しだけ大人っぽく見えた。

「バンド、一緒にやらん?」

わたしの中で、ずっと眠ってた何かが、ふっと目を覚ました。


でも、すぐには返事ができなかった。
もうベースなんて触ってないし、
そもそも音楽って、自分にとってなんだったんだろうって、考えこんでしまった。


その夜、
わたしは、一番上の兄に電話した。

小さい頃から、音楽に興味を持つきっかけをくれた人。
兄の部屋から流れてたバンドの音。
夏フェスやライブに初めて連れて行ってくれたのも、
“ベースってかっこいいんだよ”って教えてくれたのも、ぜんぶ兄だった。

わたしにとって、憧れで、ヒーローで、
誰よりも信頼してる人。


「久しぶり。ちょっとだけ、相談してもいい?」

久々に聞いた兄の声は、相変わらずで、
胸の奥がじんわりあったかくなった。

リコのこと、バンドのこと、
「今さらかなあ」なんて言いながら話したら、
兄は少し笑って、こう言った。

「ルリがまたステージに立つとこ、もう一回見たいな。」


その一言が、すっと背中を押してくれた。
わたしの中で、答えはもう決まってたのかもしれない。


スマホを手にとって、リコのトーク画面を開く。

「リコ、やるわ。 もう一回、一緒に音出したいって思った。」


To be continued…
第4話:ツカサ × “一言”で繋がった夜

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