◆ 1. 昼下がりのグループチャット──「喉ガサガサ…無理かも」
その日のお昼、グループチャットにリコからメッセージが届いた。
いつも通りのテンションかと思いきや、そこには絵文字もなければ、勢いもない。
リコ:「…声、ガッサガサすぎて…カラスみたい…(泣)」
どうやら風邪を引いてしまったらしい。声が出ないなんて、リコにとっては一大事。
ライブ前じゃなかったのは不幸中の幸いだけど…これは、さすがに心配。
チャットが少しざわついたその数分後。
ぽつりと、ルリから短いひと言。
ルリ:「リコちゃん、夜、寄ってもいい?」
それはまるで、何かを察していたかのような、静かで優しいメッセージだった。
◆ 2. その夜、台所に立つ“ルリママ”

夜になって、ルリはスーパーの袋を抱えてリコの家に現れた。
扉の向こうで出迎えたリコは、タオルを頭に巻き、目はトロンとしながらも、口だけは元気そうだった。
リコ:「…お米の匂い、してる…天使…?」
ルリ:「キッチン、借りるね。すぐできるから、ちょっと待ってて」
手際よくエプロンを身につけ、台所に立つルリ。
昆布と鰹の合わせ出汁の香りが、じわじわと部屋に広がっていく。
フライパンでは、最後の一品──出汁巻き卵の準備が始まっていた。
トントン、と菜箸がリズムを刻む音。
だしを含んだ卵が、じゅわっと焼ける音。
その音が、なんだか心地よくて──
リコは布団の中で、ほわんと目を細めた。

◆ 3. リコ、白米で泣く
お盆に載せられた湯気たつおかゆと副菜たちが、そっと差し出される。
本日のルリごはん:
- 昆布と鰹の合わせ出汁で炊いた白がゆ
- ほうれん草とにんじんの胡麻和え
- 焼き鮭のほぐし身
- 出汁巻き卵(優しい味つけ)
- 葛湯(梅風味)
リコはおかゆを一口すくって、ふーっと息を吹きかけて、口に入れた。
その瞬間──
リコ:「…なんかさ、ごはんって…あったかいだけで泣けるね……」
ルリ:「え?…泣くの?味、薄かった?」
リコ:「いや、ちがう…ちがうよ、ルリルリ……これはもう、涙腺破壊系だよ……」
出汁のやさしさ。塩加減の絶妙さ。
一口ずつが、リコの喉と心をほぐしていく。

◆ 4. 食後のひとこと──「将来、どんな奥さんになるの?」
リコ:「ルリルリって…将来、どんな奥さんになるの?」
ルリ:「…え、なにそれ…また変なこと言ってる…」
リコ:「いや、真剣に聞いてんの…惚れるよ、こんなん…」
その夜。元気になったリコは「#ルリごはん」をXにアップし、
それを見たモカが「……出汁、研究するか」とつぶやいたらしい。
(文:アヤ)
料理って、体だけじゃなくて、心にも効くんだなって思いました。
ルリのやさしさが、あったかいおかゆになって、ちゃんとリコの中に届いた夜でした。